「奈良県立図書情報館」の石原慎太郎氏の追悼図書展示に抜けている大切な事

奈良県立図書情報館が、石原慎太郎の追悼企画として彼の著書と共に、様々な問題発言で物議をおこした話題の関する書籍をともに紹介する展示だ。BuzzFeedの記事で取り上げられている。
水俣病、LGBTQ、障害者、人種、女性などがテーマの書籍が20冊以上、展示されている。
企画担当者は、「(石原氏の)発言で浮き彫りになった論点を考えるため」と説明されている。

 


ただ、個人的にこの企画は石原氏の発言に関して俯瞰で見て様々な角度からとらえた風に見せているが、もともと嫌悪感の部分を出した企画としか思えない。
彼が歯に衣着せぬ発言で物議を醸したのは間違いないし、彼の発言が全て正しいとは全然思わない。
ただ、彼の政治家としての発言は、発信したものがすべて、障害者や女性、外国人などに対する問題発言にまとめられるのは恣意的が過ぎるのではないかと思う。
もしも「知ること、考えることのきっかけになる場として」という、この企画者としての言葉が本当なら、彼の政治家としての発言の中で功績のほうも取り上げるべきだ。

まず匿名でいいのか?

この企画は、著作を並べるだけでなくメッセージを持っている、つまり意見をしているわけだ。ここでの説得力の話をするなら、石原氏は問題発言も含めてすべて、ご自身で本人として発言し表明してきた。
それに対し左の雑誌や新聞も含めて、この企画も施設や新聞者名で個人名は見えて来ない。
攻撃するのはいいけど、されるのはいやなわけだ。
彼は攻撃されても(正しいかどうかは別にして)、自信の発言とみとめ、反論してきた。時に謝罪してきた。
はたして思っている事を自分の発言として言えるのかどうか?まずここに、意見の潔さを感じない。館長が企画を認めたなら、企画者か館長の名前を表記してはどうだろう?

彼の政治家として功績は全然ないの?

この企画の展示を見ると、まるで作家として才能はあったけど、本人はとんだレイシズム容認者だったような印象しか受けない。
かれは、政治家としては権力を掌握し傲慢な差別主義者で君臨していただけだろうか?
彼の発言の中で、とりあげるほどの功績、または社会への問題定義はなかったのだろうか?

 

 

 

1999年日本の首都東京の都知事は記者会見でぶちあげたディーゼル車排ガス規制は、日本の自動車業界を動かした。体に悪影響がある事を国が見過ごしていたものを、都知事が無理矢理動かしてものだ。
ディーゼル車NO作戦」は、当初物流業界に反論も多かったが意に介さなかった。いろいろ業界や規制でがんじがらめで動かない事は、力技で豪腕でなければ動かせないだろう。
その後2003年から周辺3県も同調。最終的に環境省日本自動車工業会も動き、ディーゼル排ガス規制が強化されることが決まった。この動きで石油業界は数千億円の追加投資を行って、軽油の残留硫黄分を欧米よりも低下させた。
この功績で、いったい何人の喘息の子供をなくしただろう。日本の都市に青い空が戻ってきた。
彼の著作にもあるが、是非客観的な他社の評価やディーセルとPM、喘息、公害病の書籍も展示してはどうか?

すべてをあげるわけではないが、東京マラソンもその一つだろう。ボストンやニューヨークのような世界的なイベントを東京でも行うようになり、これだけでインバウンドや世界的なニュースになるイベントも石原氏が2007年に初開催した。
調整型の政治家では、大都市東京の交通を止めるため警察や政治家への説得は彼の豪腕がなければ無理だったのではないか?
おおきな市民マラソンが、都市への影響などへの書籍はどうだろう?

尖閣諸島購入の問題は、彼の対応が正しかったかどうかはわからない。ただ、個人所有のままで個人から中国が買い上げどんどん所有者の中国人が住み始めたらどうなっていただろう?尖閣諸島という言葉を危機感を共有し日本人全員が知るようになったのは、私は意味があると思う。当時の野田内閣が国有にしたほうが、問題をこじらせたと思う。

問題発言とは?どんなもの

「業病のALS」発言に関しては、私も問題だと思うし、彼も後に業病という言葉の使い方を誤った謝罪している。2020年の発言ということは、すでに政治家を引退し87歳の発言である。だから許されるというものではないが、1つの言葉をフォーカスして間違いを正すには、少し違和感を思える。私自身80歳をすぎて、すべて言葉を間違いなく発言できるかどうかはわからない。
「武士道の切腹の際の苦しみを救うための介錯の美徳」に関しては、個人の考え方で今の時代には合わないが彼の生きてきた時代でいうと、そのような意見は正しいかどうかは別にして戦争を体験した87歳のおじいちゃんの意見である。

女性活動家らが「ババア発言事件」として問題にしているのも、左翼メディアがまるで都知事である彼が言ったように喧伝している。
ただ全文を伝えるものはほとんどない。雑誌の対談の話の中で

「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」”なんだそうだ。“女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん・ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね(笑い)。まあ、半分は正鵠を射て、半分はブラックユーモアみたいなものだけど、そういう文明ってのは、惑星をあっという間に消滅させてしまうんだよね。」

これをもって、この全文を見ると話の中できわどい会話で遊んでいるだけのように思う。配慮もかけるかもしれないが、本人が悪しき有害なものは「ババア」と言っているのとは随分印象が違う。

その他の戦争、靖国への発言があり、これも左翼メディアが再三とりあげた。
ただ、生きてきた時代を考える必要がある。実際に子供の頃戦後直後を体験し、顔を見知った義理の父や親類などが靖国に埋葬されている人が参拝するのと、戦争の現実感を持たない今のメディアが単に鷹派として発言を切り取り報じるのは背景なしに説明するのは正しいだろうか?。

そもそも靖国のようなナーバスな問題は避けているように思うし、もしいろんな視点というなら靖国のいろんな視点でとらえた書籍を展示することもできたはず。

こういうリベラルにとってタブーな話題は意図的に避けたのか?

全体的な印象は昭和な昔の男である。
ただ、最初から作家+問題発言としてまとめるのは、はたして見識が深いのだろうか?
それはバイアスではないのか?

恣意たっぷりのまとめた展示をなぜかこういう方々は「公平に」とか「いろんな視点で」とか言うのである。

私は図書館は好きである、図書館は街の財産だと思う。
だから、自分がきらいな人にも、きちんと目をむけて欲しいと思う。