ヤマザキパンがカビない話をいまだに「これ知ってる?」って書くの恥ずかしくない?

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渡辺雄二という「買ってはいけない」シリーズをたくさん執筆しているジャーナリスト(?)がいる。肩書きは科学ジャーナリストらしい。

千葉大工学部合成化学科を出たらしいが、理系ではあるが食品についての研究を専門にやったわけではない、消費生活問題紙に入社してからいきなり、このような記事や出版をはじめた。

調査したと言っているが、彼は特に研究や実験をしたわけではなく全て情報源は他人の取材である。

言っている事の全てがデタラメではないが、彼の極論やミスリーディングを意図して誘う文章、間違った認識がかなりのナチュラリストなどに浸透し、ノイジーマイノリティとして世論をゆがめていると思う。

やりだまにあげられたヤマザキパンの臭素酸カリウム

もっとも最初に流布された話が、この「ヤマザキパンはカビない」の話で臭素酸カリウムというヨーロッパでは禁止されている発がん性の物質をいれているのでヤマザキパンは不自然にかびないのだという話。

まず一つ目の誘導的理論展開は、名言こそ避けているが臭素酸カリウムがとても特別な物質であるように書かれています。例えばヤマザキパンのせいで、人が口にするはずのなかった発がん性物質を体内に入れてしまっている、というニュアンスです。

しかし、この臭素酸カリウムは実は普通の水道水にも含まれます。魚肉練り製品などにも入っています。ちなみに水道水の臭素酸カリウム浄水器では除去できないです。除去の対象になっていません。

パンに入る臭素酸カリウムは非常に微量で、ましてや高熱で焼き上がったあとはほぼ残っていないと思われます。化学物質の有害無害の話をする時に「量」の話を無視して話しするのが、こういうトンデモ科学の人たちの常套手段です。この程度デトックスできなかったら、人はとっくに死んでます。

例えば和歌山カレー事件で猛毒のイメージがあるヒ素ですが、米や海産物にも含有されますが食品安全委員会でも健康被害は報告されていません。

私たちは一生のうち、どれだけ米を食べているでしょうか?

一度に接種する「量」の問題なんです。一度に多く接種すれば塩でも醤油でも命の危険はあります。

そして臭素酸カリウムのパンへの使用は2014年以降は行われていません。アメリカではまだ一部使われているようですね。

 

 

 

国産小麦神話とカビ

二つ目は、臭素酸カリウムは防カビに使うものではないということです。

小麦を扱うメーカーの人に聞けばわかりますが、よく最近のパンなどで国産小麦使用を売りにしたりしていますが、国産小麦はパンに使うにはオーストラリア産などと比べて優れた小麦ではありません。

ランクとしてはオーストラリアやアメリカ、カナダの小麦に遠く及びません。海外の小麦のほうがグルテン含有量が多いためパンが膨らみやすくパンに使うのに向いています。この臭素酸カリウムはパンに向かない国産小麦をふっくら焼くために使っていたそうです。

この時点で完全に科学的視点は抜けている論だと言えます。食べる食べないを置いておいて臭素酸カリウムを大量に入れればカビないかというと、そんな事はありません。その程度の実験もせずに、こう言うのは最初から結論がありきだからです。

そしてカビるカビないの話は簡単で、家で焼いたパンのほうが早くカビて、ヤマザキパンがかびないのは衛生管理された工場でつくっていないからです。

カビはいたるところにありますが、家でパンを焼くときにエアーダスターで全身のほこりを取り、1日ごとに消毒される服に着替え髪の毛も完全に帽子で覆い焼く人はいません。もしも同じ食材で焼いても大手メーカーの工場内で焼けばカビの発生は遅くなるでしょう。ただ、それだけの事です。

家で焼いたパンは作った時点で、すでにカビの菌がたくさん入っているだけです。

もちろん先ほどの量の概念で、その程度口に入れても健康に害はありません。

画像のイメージで洗脳されるショートシンキング層

これは温暖化の時の南極の氷がバーッと割れる映像と同じです。なにか、とてつもなく氷が溶けているイメージは言葉だけで聞かされるよりも温暖化を強く印象づけられます。

このアメリカの元副大統領アル・ゴアが行ったメディア戦略はアメリカの高度な広告映像などをつくる手法で作られています。

実際には南極の氷は、夏になれば昔からあのように溶ける時期があります。最近は冬の寒冷期が長く全体的に南極の氷が増えている事が報告されています。物事を熟慮しない層は思想を誘導されているわけです。

それは映像もふくめて「雰囲気」で、善し悪しの判断をゆがめられているのです。

もちろん、そこには大きな作為が感じられます。

大手メーカー=悪という構図で、機械的な工場は添加物を多く使用しているという安直なイメージを、事実の断片をつなぎあわせて補完していきストーリーを作ります。

映像の時代になった今は、ヤマザキパンと家で焼いたパンに日ごとの変貌の仕方を画像で見て強烈なイメージとして焼き付けます。

アメリカは移民や貧困層なども多く、実は文字を読めない層(英語)が多くいます。映像による扇動は選挙でも見られるように大変よく使われています。
ほとんどの人が大学を卒業もしくは最低でも高校を出ている日本で、なぜこんな非化学的な事が雰囲気だけでまかりとおるのか?広告で作られたメディアのマナーが悪いように思います。

ある意味炎上芸人

ひとつの本を見るのでなく、これまでどのような本を出しているか見るとわかってきます。

Amazon.co.jp: 渡辺 雄二:作品一覧、著者略歴

この本の一覧を見てると、たとえて言うならこの人は何を芸にしているのがよくわかる。30年近く科学ジャーナリストだと言うが、ラボで研究したことも実験を繰り返したこともネイチャーに論文を書いたこともない。

この人の言うことと食品衛生学の教授との言葉のどっちを信用するかを、記事を見た人は、よく考えたほうがいい。大学の教授がすべて正しいとは言わない。ただ、この並びを見ていると反響があり売れるから続編を出しているようにしか思えない。

先にバズりそうな議題を見つけてから、それを補てんする噂や風評、都市伝説を集めて断片をつなぎ合わせる。

自分の身体に入れるものの事を真剣に考えようと言う、それなら自分の脳に入れる文章も真剣に考えよう。

すくなくても、読んだ本が訴える説の反証くらいは探してみよう。