オーストラリアの科学者が、癌細胞を永久的に眠らせる今までとまったくアプローチの違う新薬を開発

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オーストラリアのJonathan Baell(ジョナサン・バエル)教授、Tim Thomas(ティム・トーマス)、Anne Voss(アン・ボス)准教授のチームは、マウスのがん細胞を永続的に休眠状態に置くことが可能になる新しいタイプの薬を発見したと2018/8/1Nature Natureに掲載された。

www.abc.net.au

 

まったく新しいアプローチ

10年の研究を経て実現化されたこの薬は、今までのがん細胞を駆逐する、攻撃するタイプの薬物治療は細胞に不可逆的なDNA損傷を引き起こすリスクも内在し健康な細胞も攻撃してしまう副作用も考えられます。

この新薬は、がんの成長を促進する特定のタンパク質の生産を止めるように設計されています。

"細胞は死んでいないが、もはや分裂し増殖することができない。この能力がなければ、がん細胞は事実上止まってしまう”

という考え方のもとに研究し、癌の進行を停止させるか、またはヒトにおける再発を遅らせるのに有効であると考えました。

次のステップは、この概念が具体的にエビデンスを持ち、これからぞれぞれの癌や人に対して適切に働くたんぱく質と化合物を特定していく事だと述べられています。

また臨床まで行くには少し時間がかかりますが、とにかく副作用なく癌の進行を一次停止できる薬とは非常に希望がもてる話です。

 

 

 

大手製薬メーカーも含めた数々の失敗の果てに

トーマス博士曰く、この開発は数多くの大手製薬会社が過去に試みながら、ことごとく失敗に終わり。その理論そのものが疑問視されはじめていた概念だったそうです。

これは10年を要しおよそ250万種類の化合物をスクリーニング

化合物を開発するのに数年。実証までにまた数年かかったそうで、延べ52人が関与したそうです。まさに執念ですね。

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細胞増殖を阻止するために新しく開発された薬剤(赤色)の参考イラスト

専門家達も評価する、大きな一歩

ニューサウスウェールズ大学の癌生物学者のDarren Saunders(ダレン・サンダース)は、この研究の重要性を説いています。「この研究は、病気の生物学的な基礎を読み解き、化合物を発見し、そのロジックに沿って医薬品を設計、動物モデルでの試験での成功」まで網羅している。

人に対する薬物としての評価はこれからですが、極めて信頼性のおける内容のようです。現在はこの大規模なプロジェクトへのパートナー組織などを探す段階に入ったようですが、是非全世界的に速やかに進めて欲しいですね。

これが実現すれば、とにかくこの薬で一次停止させ外科的手術や光治療、IPS、分子標的薬などの根治の選択肢を選べるかもしれません。