がんの自然治癒を謳う書籍の印象操作による販売手法『がんが自然に治る生き方 』ケリー・ターナー

新聞の広告や、ガンに関する書籍を検索すると最近よく出てくる書籍に『がんが自然に治る生き方 』(ケリー・ターナー著, 長田美穂訳; 2014年 プレジデント社) があります。

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この書籍では、この手の販促手法として用いられる典型的な印象操作の手法がとられています。

この本には化学治療に否定的な意見を臭わせ食事療法やハーブやサプリで寛解した人がいるようなストーリーを描いています。

このケリー氏のプロフィールには「腫瘍内科学」を研究するハーバード大学のケリー博士となっています。こう書いてあると、普通の人はハーバード大学の医学博士で腫瘍内科の先生なのだなと、よほどひねくれた人でない限り理解するでしょう。

ところが帯や宣伝のこの文句を見て、このケリー・ターナーが医師ではない事を理解して手にとるひとが何人いるでしょうか?

この意見を、医師でない人の意見としたらこの文章から受ける印象はどうでしょう?

もちろん意図して情報を整形しているのですね。
この人は医学に関する学問をまったく修めていません。
「腫瘍社会福祉学」つまりがん患者さんへのカウンセリングやケアを主とした学問です。
博士号の学位を取ったのはカウンセリングの分野で医療とは別です。
この英語を「腫瘍内科学」と誤訳しているのは完全に意図的です。
つまりここに書いてある話では「私は患者さんからこんな話をいくつか聞いた」という前置きが付きます。そして民間療法での癒しをレポートする人です。
ここで5つの星を付けている関係者らしき人たちがたくさんいますが、毒でないものを小銭儲けで飲ませたいなら好きにすればいいですが
ゲノム解析からスーパーコンピューター、IPS細胞の時代にこういう書籍を信じて治療をやめる人に良心の呵責を感じないとしたら正直“人(ひと)”としての品位を疑います。

アメリカでこういう本がベストセラーになやすいのは、国民皆保険がないため普通の収入では化学治療などはできないので、こういう本に頼る人がおおいようです。

つまり抗がん剤治療を「しない」ではなく「できない」なのです。

また、この本の巧妙なところはアメリカならではの訴訟をさけるために、それぞれの話で自分の意見としての言いきりをうまく避けています。

どう考えても食事法やサプリで寛解に至ったようなストーリーのイメージを描いたうえで仮説と言っています。もちろん、それでまったく効果が出なかった人の事は書きませんし多くの人のサンプルから出した統計があるわけではありません。

私はあくまで、こういう事をして寛解した患者さんの例をレポートしてますよというスタンスを貫いています。しかも文章に中にたくみに数字を入れてくるのに、結果は数字で無くストーリーで展開したりと、かなり意図的に代替治療のビジネスへ結びつける意図が顕著です。

こういう本をとりあげて、サプリなどを売っている人たちが抗がん剤の諸悪説に結びつけるのはとても見てて不愉快です。5つ星を付けてる人の意見も気持ち悪いです。

もし信じている人がいたら、こう考えて欲しい。

抗がん剤寛解率は確かに画期的な数字ではありません。

ただ、それを否定するサプリや民間療法やスムージーを推奨する人は寛解率や治癒率やエビデンスのモニターの数字を出しているのだろうか?
数字で否定したものを、それに対抗する数字をなぜ出さないのだろう?

よく考えて欲しい。